バウハウスデザインTOPICS

「建築家の視点」~青葉モデルハウスを考える~
「ライトウェルハウスができるまでのストーリー」

青葉モデルハウスを建築するにあたり設計を依頼した建築家 戸田悟史氏。
彼がどのように土地と向き合い、その弱点や盲点を分析し、
様々な制約を乗り越えてコンセプトとなる「ライトウェルハウス」を導き出したのか、
その視点をリプレイしてみる。

当初、青葉モデルハウスは以下の構想で建築計画がスタートした。

青葉モデルハウス構想

  • 夫婦2人、子供2人を想定
  • 薪ストーブを設置
  • 吹き抜け
  • 中庭的な空間
  • 建ぺい率40%、容積率80%
  • 車3台スペース確保
  • 外観はスクエアにしたい。ただし、第一種高度制限あり。
  • 南西方向に開けた土地で、西陽のケアが課題。
  • 東南側の光を取り込む工夫が必要。
  • モデルハウスとして利用しながら、実際に居住する考え。

(敷地見取図①:左上)

青い線で囲まれた部分が敷地。南西方向が道路。南西以外3方向とも隣家に面している。
敷地面積:150.00㎡ (45.00坪)  /  建ぺい率:40%  /  容積率:80%

(敷地見取図②:右上)

黄色の矢印:日中の光が入ってくる方向。東南方向からの光を取り込みたい。

(敷地見取図③:左上)

敷地に対して建物をどう配置するか。北側に寄せて配置した方が東南側からの光を少しでも多く取り込むことができるのだが…
この土地は、第一種高度地区で北側斜線制限があるため、「外観をスクエアにしたい」という要望を叶えることが難しくなる。

(敷地見取図④:右上)

北側斜線を回避し、「外観をスクエアにしたい」という要望を叶えるため、敷地に対する建物の配置は、あえて南側隣家に寄せることとした。その代わりに、別の方法で南東方向からの光を取り込む工夫が必要となる。また、同時に、西陽対策も考えなくてはならない。

(ライトウェル見取図:左上)

建物のファサードのイメージ…スクエアにしたいという要望…
西陽ケアを考慮し、唯一開けている道路側にあえて窓を設けないという発想に。南西側には窓を設けずに、東南方向からの光は取り込みたいという矛盾ともいえるような問題に直面する。東南角に光を取り込むための坪庭を考案。これが「ライトウェル*」である。

*『ライトウェル』:採光のためにつくられる中庭のこと。建物に吹き抜けのスペースを作り、その吹き抜けに面して窓をつくる建築手法。「光の井戸」という発想。


(ライトウェル断面図:右上)

黄色い矢印は南側からの光が入ってくる方向。青色の線は反射光を表す。
上空からの光が坪庭の内壁に反射し室内へと入るように設計。
外観は黒色のバルバリウム仕上げだが、坪庭の内壁は光の反射率を考慮し白色の塗壁仕上げとする。
「坪庭の吹き抜け+室内の吹き抜け」この2つの吹き抜け空間を並べて配置する。するとその2つの空間が光の井戸となり1Fリビングにまで光を取り込むことが可能に。

(ライトウェル平面図1F:左上)

黄色の矢印は光の方向を表す。ライトウェルとリビングサイドの吹き抜け空間を通して1Fリビングの奥まで光を取り込むことに成功。

(ライトウェル平面図2F:右上)

吹き抜け空間に面した2F階段ホールはもちろん明るい。

(青葉モデルハウス立面図:上)

この土地は、南西方向に開けているのだが、その他の3方向は隣家に接している。
そのため、どの方向に大きな窓を設けたとしても借景は望めない。プライバシーの確保もできない。大きな開口や庭をつくったとしてもその活用度は限りなく低いと言わざるを得ない。そのような土地の弱点あるいは盲点ともいえるポイントをあえて逆手にとって、戸田氏は設計を試みた。「ライトウェル」を設けたことは、この家を「外には閉じていて、内に開けた家」にすることへと導く。戸田氏の考案した坪庭は光の井戸として採光の役割を果たすとともに、「内なる借景」の役割も果たすことになるのだ。西陽のケアや様々な制約を斬新なアイデアで見事にクリアした戸田氏の設計。こうして「ライトウェルハウス」は完成した。

事実、モデルハウスに行ってみると実感するのだが、道路側からは窓がないため中の様子は全く分からない。しかし中に入ってみると、1Fリビングはとても明るいのだ。玄関ドアを開けると目の前に明るい吹き抜け空間が広がる。坪庭に面した全面ガラスの吹き抜け空間はとても開放的で、窓から坪庭の木々の緑を借景として楽しむことができる。プライバシーがしっかり確保されているのに明るくとても気持ちの良い空間である。その吹き抜け空間に設置された薪ストーブ。ゆったりとした時間の流れを感じることができる坪庭側のチェアはこの家の特等席である。

ファサード:右下の正方形の開口部がライトウェル。道路に面した南西方向にはあえて窓を設けない。

外壁の黒色ガルバリウムと対照的に、坪庭壁面は光の反射率を考慮し白色塗装仕上げ。

坪庭の吹き抜け空間+室内の吹き抜け空間がつくる「光の井戸」。1Fリビングに光を届ける。

設計:建築家 戸田 悟史氏
(トダセイサクショ一級建築士事務所)

【略歴】
1974年|東京都生まれ
1997年|芝浦工業大学建築学科 卒業
1999年|芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程 終了
1999年|株式会社大田純穂建築設計研究所
2009年|トダセイサクショ 一級建築士事務所 開設
2016年|株式会社トダセイサクショ 一級建築士事務所 設立

【建築家のコメント】
「家」を考えている人の良い相談相手、要望を叶えるコンシェルジュとして「イエ」をカタチにするためにセイサクのお手伝いをしていきます。また思い描く夢を現実にするため、要望とデザインをまとめ上げ、土地の歴史や特性を考慮して、建物の「バランス」をとる設計をするよう心がけています。

Text by Kozue INAMURA(2019/1/31)



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